パパ育休 – 180日間の育児奮闘記
不動産業者が乗り越えるべき大きな壁
不動産業界、特に営業に携わる人間にとって関係が深いのが宅建。取得必須の資格といってもいい。正式名称は宅地建物取引士(以下、宅建士)。
不動産の取引にあたり、契約時には賃貸・売買にかかわらず、不動産業者からお客様に対して「重要事項の説明」をしなければならない。この重要事項の説明ができるのは宅建士の国家資格をもつ者だけ。営業担当が資格をもっていない場合、担当者とお客様だけで契約を完了させることはできない。契約時には資格をもつスタッフに出てきてもらわなければならないのだ。
そんな重要な国家資格である宅建。不動産業界だけでなく、財産に関与する金融や土地を扱う建設業などの職種でも資格ホルダーは歓迎される。広く役立つ資格であり、もちろん、資格試験に合格しなければ手に入らない。
資格試験は年1回(例年10月)。受験資格が設けられておらず誰でも受験できることもあり、毎年20万人ほどが受験する国内最大規模の国家資格でもある。そのため合格率は例年15%ほど。100人に15人ほどしか合格できない難関資格として知られている。資格取得のための専門学校も多く、大手書店の資格関連の棚には宅建のコーナーが常設されている。
社員の多くが難関国家資格に合格
不動産の事業所には、社員5人につき1人、宅建士がいけなればならないと定められている。社員25人の営業所であれば、宅建士の資格ホルダーが5人以上いなければならないわけだ。
SGWの従業員は25人。うち、宅建士は22人。この事実を伝えると驚かれる。営業以外の社員まで、つまり社員のほとんどが宅建士の資格をもっているのはめずらしいから。
不動産業界には専門用語が多く、法律や建築など、関わる分野も幅広い。膨大な試験範囲の中から出題される問題を2時間で50問。マークシート式の4択問題を、1問2分ほどで説かなければならない。
この難関資格に合格するためには、かなりの勉強量が必要になる。資格試験前は毎日5時間勉強したという社員もいるほど。5時間まではいかなくても、みんなプライベートの時間や睡眠時間を削って資格試験に挑んでいる。仕事と勉強の両立というのは想像以上に大変だというのが経験者の共通した感想だ。それでも多くの社員が挑戦する。そして合格している。その理由とは……
自分のためが仲間のためでお客様のため
まずひとつが、代表である嶋屋の強い想い。不動産の仕事に携わる者として資格を手にしてほしい。義務としてではなく、仕事にかける心意気として。みんなで成功体験を共有し、資格とともに自信を得てもらうため。お客様にご安心いただき、信頼していただくために。
その想いが社内に浸透しているから、可能であれば挑戦しようという社員が多くなる。ちなみに資格手当は月3万円。業務担当に関わりなく、資格取得者全員に支給される。
そしてもうひとつが、自然発生的にはじまり、続いてきた社内のグループ学習。これが合格率平均15%前後という難関試験に、続々合格者を出している決め手といえるだろう。
7月くらいから、2週間に1度程度のペースで模擬試験が行われる。本番と同じように、50問を2時間で解く。勤務時間内に社内で開催されるものなので、役員全員に参加者の成績が公開される。
本番と同様の形式の模試を繰り返すことで、本番でも落ち着いて解答できること。似たような問題が出題されることもある。過去問や市販の参考書などをもとに問題を作成する社員、参加者の成績を管理する社員など、すでに資格を取得した社員たちが協力し合う。
「仕事をしながらの資格学習がどんなに大変か、宅建の試験がどれほど大変か、わかっているから絶対1回で合格してほしいと心から思う」「資格を取得して、プロの不動産業者のステージで活躍してほしい」。経験者たちが力を合わせ本気で後輩の資格取得をサポートする。
宅建の名物講師、ここにあり
模擬試験の他にも、希望者のための講習会が行われる。週に1〜2回、30〜40分ほど使って、宅建業法に限定した問題を出題。答え合わせの後に、メンバーが間違った問題を拾い出して、みんなで「なぜ間違ったのか」「どうしてこういう答えにしてしまったのか」を話し合う。みんなで理由を考え、納得した内容は頭の中に定着する。間違えなかったメンバーも、説明しようとするとはっきりわかっていなかったりする。人に説明できるくらいしっかり理解すれば完璧だ。
理解するだけでなく、記憶が欠かせない分野もある。どちらにしても、ひとりで勉強するより誰かと一緒にしたほうがいい。同じ目標を目指す仲間、いい意味でのライバルがいることで緊張感もモチベーションも増す。
最後まで合格ギリギリの成績だったメンバーが、自己採点で高得点を取って喜ぶ姿、あきらめていたのに合格の通知が届いて胸をなでおろすメンバー。それぞれが本気で臨むから、合格したときは喜びというよりは深い安堵。その後にジワジワと喜びや達成感が湧いてくるのだとか。
模試や講習会で指導し、毎年の挑戦者たちを常に見守る役員は、いまや名物講師と呼ばれている。「自分の体験から役立つと思う学習法、知識を伝えているだけ」という名物講師のもとには、宅建挑戦者が自主的に集う。
宅建試験対策の社会人予備校は数多く、数十万の講座料を払って予備校に通い、合格を手にする人も多い。SGWでは、専門予備校顔負けの講師やアドバイザーが社内にいるようなもの。しかも、合格を本人と同じくらい喜ぶ講師やアドバイザーだ。資格試験の日、試験を終えたスタッフの自己採点も、合格発表も、受験者と共に気にして、肩を落としたり喜び勇んだりする。「受験者が多い年はやきもきして大変」と言いながら、スタッフの合格談話を心からうれしそうに話す講師役員。
社内一丸の想いが挑戦する力になり、自ら努力し、資格学習を続けるモチベーションとなる。先達による親身な学習サポートが、同業者にも驚かれる合格率を実現する。そんなスパイラルの結果が、不動産のプロ集団としての成長につながっていく。