パパ育休 – 180日間の育児奮闘記
世界4000万人が楽しむ、もっとも身近で難解な対戦型情報ゲームとは
世界77ヵ国の国と地域で、推定4000万人に楽しまれている対戦形式のゲームがあります。日本人の多くは、その存在を知っているはず。発祥はインドや中国など諸説。日本に伝わったのは平安時代以前。日本での競技人口は推定350万人。かつては世界最強国といわれていました。けれど、今では競技人口が格段に多い中国や、国を挙げて力を入れている韓国に押されています。
さて、このゲームがなんだかおわかりでしょうか。
答えは……囲碁。白と黒の碁石が碁盤に並んでいるビジュアルは思い浮かんでも、ルールを知っている人は少ないでしょう。世界でのポピュラーさや、日本での将棋の人気に比べると、日本における囲碁のマイナーさは、アンバランスなほどにも感じられます。
その理由を、弊社代表の嶋屋宏則はこう語ります。
「囲碁は二人零和有限確定完全情報ゲームです。2人で対戦するボードゲームの多くがそうであるように、一方の利益は他方の不利益になり、変化は膨大だが有限で、運の要素がない、互いの情報はすべて開示されている。その中で、一番難解で解明が難しいものが囲碁だといわれています」。
「囲碁のシステムを解明する手法は、他の分野をひもとく鍵にもなるであろう」ということで、AIやディープラーニングの研究テーマとして盛んに用いられており、それが世界中でネット対戦が盛んな理由にもなっているのだとか。
シンプルだからこそ難解で面白い、それゆえに危険で怖い世界?
とはいえ、囲碁のルールは非常にシンプルです。ルール自体は4つ程度しかなく、碁石は盤上のどこに置いてもいい。そのシンプルさが囲碁を難解にしているというところが、また深いではありませんか。
ルールが少なく、なんでも自由にしていいといわれると、逆にどうしていいかわからない。目隠しをされてどこかに連れて行かれ「進め」と言われる状態とでもいいましょうか。そんな手探りの状態から自分の立ち位置を理解し、どうすべきか、どうしたいかがわかってきてから(つまりどういうゲームなのかがわかってから)は「面白さしかない」と言う嶋屋。いわく「面白すぎて危険」「けっこう怖い世界」なのだそうです。
不動産会社のコラムのテーマが囲碁だということに、ご覧になっている方はもちろん、セントグランデWの社員でさえ、唐突さを感じていることでしょう。その理由は、若き日の嶋屋が、プロ棋士に憧れるほど囲碁にのめり込んでいたからです。そして、その経験がものの見方、考え方、対峙の仕方などに生きていると語るからです。
プロに憧れるほどのめり込みながらも決別、不動産業に打ち込む
中学2年生で囲碁に出会い、その魅力にはまったという嶋屋。中2で囲碁と聞くと、早めの出会いのように思えますが、それは私をはじめとする囲碁を知らない人にとってのイメージ。囲碁に本気で携わる競技者にとって、囲碁はスポーツと同じなのだそうです。
野球やサッカー、水泳やテニス、体操や柔道などを考えても、13歳で初めて経験するというのは遅い。ましてや、オリンピック出場やプロを目指そうというのであれば遅すぎるでしょう。囲碁もそれと同じなのだとか。そんな囲碁=スポーツ説も非常に興味深かったのですが、それについては、あらためてテーマを組みましょう。
それでも嶋屋は囲碁にのめり込み、懸命に打ち込みました。そして、大学の囲碁部で実績を上げながら、二十歳にして「還暦まで囲碁をやめる」ことを決断します。それは「自分の力がピークに達しつつある」ことを自覚したから。そして、師匠ともいうべき存在であったプロ棋士のアドバイスもあり、囲碁を離れて学業に専念することとなるのです。
「囲碁に打ち込んでいた間は、学校の勉強はまったくといっていいほどしていなかった。囲碁以外のことを考えたり、ましてや集中したりすることなんてできなかった」と言い、「ほら、囲碁ってやっぱり危険でしょう?」と笑います。
というわけで、囲碁から離れるにあたって、この先どうしようかとイチから考えたとのこと。そして囲碁の家庭教師をしていた家の伝手で、ある会社の社長に引き合わされ、そのまま就職。囲碁への集中を仕事への集中に転換し、その後は不動産業一筋。現在では不動産のプロとして、セントグランデWを率いているというわけです。
囲碁界のレベルアップを目指し、新たなチャンスを生み出す大会を企画・協賛
「仕事と囲碁を器用に両立できるタイプの人間ではないという自覚があったから。私にとっては、どちらもやるならすべてを賭けるしかないもの」。だから仕事をやめるまで、自分自身で打つことはしない。棋譜(対戦の記録)を読んだり、座興で打ったりすることはしても、真剣には踏み込まない。そして、仕事をある程度形づくった後、囲碁と仕事を両立したい。
嶋屋の想いは、2018年12月、弊社が企画し、全面協賛して開催された『中庸戦』で形になりました。囲碁の専門紙『週刊碁』に「ユニークな新しい棋戦」として紹介された大会です。
ちょっと不思議に思えそうなタイトルが、この大会の趣旨を表現しています。参加資格は「31歳から60歳までのプロ棋士の中で、全棋士参加棋戦の優勝経験のない棋士」。若手やハイレベルのプロ、シニア棋士は、比較的対戦の相手や機会があるとのことで、それ以外の、対戦の機会に恵まれない中堅プロ棋士にチャンスを与えること。それにより、囲碁界のレベルアップを図ることを主なる目的に据えた大会です。
初代チャンピオンとなったのは、林漢傑8段。初めての栄冠を手にし「できすぎの碁が打てた。自分に自信を持てるようになりました。このような機会をいただき感謝しています」と語ってくれました。
囲碁界における中庸戦の意味や詳細、そして、囲碁に真剣に対峙していた嶋屋の経験が、どのような形で今に生きているのか。記したいと思う話はまだまだあります。が、この原稿はすでに長くなりすぎて怒られそうです。
これまで社員の多くは囲碁とは無縁でしたが、嶋屋の熱意や中庸戦開催の経験から、社内にジワジワと囲碁への興味が広まりつつあります。セントグランデWの取り組みや、メンバーの人となりを紹介するこのコラムの中でも、囲碁の魅力や中庸戦について、おいおい紹介していきたいと思います。
「第3回 SGW杯中庸戦」の詳細はこちら